浦賀ドック

statement

私は2017年に浦賀ドックを初めて撮影し、2019年から本格的にそれを記録として撮り始めました。最初は浦賀の町の象徴として建っているドックを漠然と撮り始めましたが、解体されていく建物を見て町の一部であったドックを自然と追いかけるようになりました。

青い空の日に撮影するドックはとても生き生きして見えます。また造船所として動き出したらとても面白いだろうなと考えたこともありました。しかし時代とともにドックはまた違うモノになろうとしています。

いつか、あの青い空とともに建っている浦賀ドックはなくなってしまうかもしれません。そのために、私はそれを記録として写真に収めることによって、また思い出すことができるようにしました。記録することで浦賀ドックの魅力を写真を通して他者にも伝えていくことができ、それが私に唯一できることだと思っています。

commentary

1枚目は西にあるドックを撮りました。遠くから見えるドックの屋根は浦賀の町の象徴にもみえます。撮影してから3年半が経ちますが、この屋根をみるととても懐かしい気持ちになります。

2枚目は浦賀ドックの中を撮影した写真です。長い年月を感じさせる場所でとても現実味がありました。コンクリートには所々乾ききっていない水が張っていて、水面を見ていると今と昔を繋げているようなイメージを感じさせました。

3枚目はドックの建物を解体している現場です。自分が中学生ぐらいにドックの場所を何に使いたいのか、学校で考える時間がありました。当時は考えたところでドックはなくならないだろうと思いましたが、十数年後に本当に解体され始めたので、私は自分の記憶の中の浦賀ドックを忘れないように解体されていく建物を写真に収めました。

4枚目はレンガの向こうに4体の黄色いクレーンと鉄骨の塔が並んでおり、その様子がとても面白く写真に収めました。後でその写真を見返してみると左下に薔薇が咲いていたのです。この薔薇は浦賀の町にドックの建物が存在し続けてきたことを、薔薇というメッセージで教えてくれているように感じます。

5枚目はドックの横を通っていた際に建物の色と空の色合いがとても良く撮影しました。普段は遠目から撮影することが多いので、今回はドックの一部分を記録として写真に収めました。ほとんどの建物が解体されてしまった中、ここはまだ残っている建物の内の一つでとても貴重なのです。

message

statement

messageというのは、多くの人が見落としているモノや普段生活している中に隠れるように存在しています

私はmessageを目の前にすると自分のアンテナに信号が走るような感覚を覚えます。それは何かを伝えてくるような感覚なのです。

心の映像にはmessageが絵として見えています。私はその絵を写真に換えてmessageが発するモノを他者にも感じられるように伝えています。

messageは自分の精神世界や目に見えないエネルギーを表し、また自分の成長とともに常にカタチを変えていきます。

日常の小さなmessageを拾うことは内にある精神と深く繋がること。それは新しい発想や考え方に出会えることを意味しています。

commentary

今回は5枚の組写真としていますが、それぞれ一枚でストーリーは完結しています。

全てプロセスは違うにしても共通して言えるのは、message(被写体がもつエネルギー)と内にある精神世界が繋がることにより、新しい発想や考え方に出会えるということなのです。

『自分の中に眠っている記憶とmessageが重なる』

1枚目の写真は自転車置き場とその横に朝顔が咲いてます。私の視界にこの景色が入ったとき何故か懐かしい気持ちになりました。過去に見たことのある景色だったからでしょう。

この時大事にしたのは朝顔と自分の距離感です。他者が写真を見たとき実際にそこに立って朝顔を見ている感覚にならないとmessageが伝わらないからです。後でこの写真を振り返ってみると朝顔などから感じるmessageと過去の記憶が重なることによって、今の自分に必要なことや求めていることを教えてくれたのだと思います。

『実験を試み、創り出したイメージから発信されたmessage』

2枚目の写真は初めて実験写真として取り組んだ結果生まれたmessageです。今までの私の撮り方はどこかに出掛けて良かった所を撮ってくるスタイルだったのですが、今回のように素材を探してきて実験的にカタチを創り出すのは初めてでした。

この写真では鏡とフリージアの枯れた花が使われています。鏡の中というのはどこか別次元に繋がっているイメージがあり光の反射で同じものが映るという原理があるにしろ、鏡とフリージアをどういうカタチとして見るかによって、鏡が鏡でなくなり枯れた花が枯れた花でなくなります。そして自分が創り出したイメージからmessageが生まれたのです。

『身近な所に隠れているmessage』

昨年から続くコロナの影響で遠出ができない日々が続いていました。普段は家の中を撮るということはしないのですが、3枚目の写真に限っては珍しく家で過ごしているときに撮ったのです。

午後2時半頃、秋で日が落ちるのも早く窓には西日の光が差し込んでいました。ふと窓をみるとカーテン越しに光が揺らめいていました。私はとてもきれいだなと思って、このきれいな光のゆらめきがなくなる前に撮らないと!と思い立って、急いでカメラを持ってきて撮りました。

光のゆらめきは自分の精神世界を表しています。そして光の向こうには私の大事なモノが存在しているように感じます。大事なモノとはいったい何なのか。messageは私に何かを教えてくれたみたいです。

『空と白い花のmessage』

この日は横須賀美術館に訪れた日でした。美術館の目の前は海が広がっていて、天気も良く晴れている日でした。終点でバスを降り少し歩いた先に不思議な植物が目に入りました。その植物は大きい葉を生やし、その中心から長い枝が上へと伸びていて、枝先からは白い花が咲いていました。

この変わった植物を写真に収めたところ、ここには青い空と白い花だけが存在していました。どこかに流れて行く雲、その中を枝に咲く白い花がただただ静かに佇んでいるように見えます。現実にはない自分の精神世界で広がる風景を見せてくれているのでしょうか。

『目の前に流れるmessageを見つけて』

私は東叶神社に向かって歩いていました。そうしたら視界に入った景色に何かを感じました。感覚的にその景色を撮り後で見てみると、特徴的な被写体は何もありませんでした。しかし中心のオレンジの柵あたりに何かを感じるのです。それは見えないmessage(エネルギー)が目の前を流れていて、そこに出くわした私のアンテナが微量のmessageを信号としてキャッチしたのだと思います。

このmessageからは人の気持ちを温かくしてくれるようなエネルギーを感じました。もしかしたらこの温かいエネルギーはどこかに流れている最中だったのかもしれませんね。

私は5枚のストーリーを経験して自分の中に存在する精神世界を垣間見ることができました。普段は現実に意識があるので心の奥底で何を求めているのかわかりません。しかしこうやって感覚的にmessageをキャッチすることで見たかったモノが見えたり、予想もしないモノが見えたり、面白い出会いや自分の表現の幅を広げることができました。

今後も大事にしたいのは、精神性を大事にして撮るということです。やはり目に見えないモノに触れるには内にある精神性を研ぎ澄ます必要があります。目に見えないモノと自分の精神性が融合することによって、新しい発想や考え方に出会えるのだと思います。